映研は会員によるオリジナル脚本で映画を製作するのが基本でしたから、原作付きの脚
本が存在したという話は聞いたことがありません。ところが、先日、偶然にも「永井豪クロニ
クル」を図書館で借りて眺めていたら、原作付き映研映画が存在していたことを発見しまし
た。22年目にして気がついたと言うべきか。「デビルマン」「マジンガーZ」などリアルタイム
で読んでいた世代ですので、私にとって永井豪は慕わしい漫画家の一人だったのですが、
今まで全く気がつきませんでした。尤も永井豪の短編らしいので、それも仕方がないようで
す。 「変身」という映研の一年映画第1弾。あの作品は永井豪の「くずれる」を原作にしている
ようです。ストーリーといい、しかも、出てくる宇宙人の名前といい間違いありません。訴えら
れたら逃れようもないでしょう。「変身」は私の一級上の先輩たちが製作した映画で「自称・
黒澤明ばりのマルチアングルキャメラ」で撮影したという好短編。先輩たちにとっては秘密で
も何でもなかったのでしょうが、原作を知らない後輩にとってはオリジナル脚本に思えたわ
けです。冒頭の追跡シーンは別アングルのカメラを同時に三台回して撮影されています。ハ
リウッドの映画やテレビドラマなどでは一度に複数のカメラを使って別なアングルから撮影す
るのは珍しくも何ともないのですが、当時の8ミリ映画の製作体制としてはかなり勇気のい
る撮影だったと思います。 パロディというか猿真似映画には事欠かない8ミリ映画ですが、正面切って「原作」付きと
いうのは珍しいかもしれません。映研の映画に関しては他にはないでしょう。 原作といえば著作権。著作権問題は昨今インターネットでも論議されています。劇判に関
しても著作権は守るべきものです。商業活動ではない自主映画では多少は目をつぶっても
らいたいものです。小型映画やビデオドラマづくりが素人の間で現在はどれほど盛んかはわ
かりませんが、好きな映像に好きな音楽をかぶせたりするのは個人の楽しみですし、つい
誰かに見せたくなってしまうのも人情でしょう。見たくないのに見せられてしまう人は不幸で
すが・・・・・・。 たとえばNHKが主催しているアマチュアのビデオコンクールなどでは使用音源の著作権
についてはきちんとした規定があります。5分以内までJASRAC管理の曲を一つ使用する
と210円だったかな。そのくらいのお金くらい払ったって別にどうということはないのでしょう
が、手続きが煩雑ですし、その使用がどの程度許されているのかもよくわからない。今は著
作権フリーで音源を提供してくれているサイトも多いので、全編それで固めてしまえば問題
はないわけです。 私も今後はそれで作品を作っていくつもりです。とはいえ、あの曲をここでかけてしまいた
いという欲求はありますね。そういう場合はつまりその段階で既に映像が音楽に負けている
のでしょうが、これは素人映画の自己満足ですから。 さて、毎度おなじみの劇映画「いけない40年ロマンス」ですが当然すべての劇判が流用
曲です。映画自体がそもそも「パロディ映画」ですから、そのラインナップだけで、げっぷがで
そうです。 
門あさみ「ロマン遊泳」(トップタイトルとして前奏を使用) 松岡直也「シーズンオブラブ」(メインテーマとして使用) 「ゴッドファーザーより 洗礼」(麻薬組織のボスのテーマ) チャイコフスキー「悲愴」(秀子の死) 「ウルトラセブンより ウルトラ警備隊(シークレットロード)」(そばGメンの結成) シュトラウス「美しき青きドナウ」(闇そば屋BGM) フェラーリ「マドンナの宝石」(カオルへの愛) 中島みゆき「誘惑」(闇そば屋で流れる有線放送の曲) 忌野清志郎&坂本龍一「い・け・な・い・ルージュマジック」(同上) 美樹克彦「花はおそかった」(山西さゆりが口ずさむ) 村田英雄「人生劇場」(山西さゆりのテーマ) ELP「マーチ」(間奏曲として使用) 「野性の証明より 戦慄の青い服」(そばGメンの急襲) 「ウルトラセブンより 侵略者の魔手(ノンマルトのテーマ)」(さゆりの追憶) ザ・サザンオールスターズ「女流詩人の哀歌」(CM曲) ハケット「悪夢」(長浦暗殺) エルガー「威風堂々」(皇居突入) 「野性の証明より 序曲〜悪魔の追跡」(戦闘開始〜山沢VS水上) 「必殺仕掛人より 必殺」(山南VS杉野) 「タイタンの戦いより プロローグ」(山岸VS小林) 「レイダースより レイダースマーチ」(ゲリラVSレイダース) 「七人の侍より 侍のテーマ」(山北VS可能) キャメル「保護(アブドラ・ザ・ブッチャーのテーマ曲)」(山沢VS海神) 「二百三高地より 佐知の悲歌〜日本の勝利」(連綿たる死〜山南VS姿) 「NHKより 七時のニュースオープニング」(正午の放送) 「NHKより 君が代」(正午の放送) バンバン「いちご白書をもう一度」(蘇る平和) ELP「マーチ」(エンディングテーマとして再使用) ちなみに銃声は主にルパン三世第2話「魔術師と呼ばれた男」から、血しぶきの音を「椿
三十郎」、合戦の音を「戦国自衛隊」、機関銃やヘリの音を「野性の証明」から流用(パクリ)
しています。 クライマックスでかかる楽曲は「いちご白書をもう一度」、それもバンバン解散コンサートの
ライブ盤の「間奏から二番の歌詞にかけて」の拝借だったのですが、これはテーマ的にも盛
り上がりました。製作(プロデューサー)から「この曲は歌詞が場面に似合い過ぎてしまうの
でよくない」と駄目を出されまして、当時映画館で見たばかりだった「蒲田行進曲より 迫り
来る時」(階段落ちのBGM)に差し替えてしまいました。それが所謂「いけない40年ロマン
ス 完璧版」という現存する8ミリフィルム版です。その後ビデオにダビングした際に曲を戻
してみたり、モノクロビデオ版を作った時に極端に劇判を削ってみたりといろいろ実験してみ
ました。それにしても、モノクロ版は劇判がない方がリアルな感じがするのはなぜでしょう
か。 この映画の劇判に使う曲を探して国立国会図書館まで足を運んだのはよい思い出です。
もう二度と国会図書館なんて行かないだろうと思います。昼下がりに窓の外の緑を眺めな
がら、永田町でクラシックを視聴していたということが今となっては夢のような思い出です。 「Uボート」や「砂の器」の劇判を合わせてみたいシーンがあったのですが、当時どうしても
レコード屋で見つけることができずに断念しました。 |